miu miu財布フリル
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null「たまには一人旅の気楽な休みがとれれば良いと、思いますよ。いつも忙しい出張ばかりで」 「あら。贅沢《ぜいたく》。私なんか……」言いかけ、「観光会社って、いつもすてきなホテルに泊まれて、すてきな場所を旅行できる。いいご身分じゃないの」 「それは、旅行会社。観光屋というのは、そのホテルを建てたり、建てるための土地を手当てしたり、新しい観光地を開発したりする。ま、土木屋みたいなものですよ」 「こんどのお仕事も?」 「ええ。ヴィーナス誕生の洞窟。その山を全部、買いしめろって命令されてましてね」  一気に、偽悪的に言った。言ってしまうことで、じわじわとわいてくる重苦しい気分から、逃れようとした。 「買いしめるの? 山を」 「ええ。できればね」 「それじゃ私たち、盛岡はおろか、洞窟の中まで一緒じゃないの」 「だから、不思議だなあ、という気がする」 「もしかしたら、橋場が仕組んだんじゃないかしら」  え、と秀彦はふりむいた。 「何を……?」 「いえ。どうってことはないけど」  ただちょっと、と颯子は、首をふった。  颯子は何を言おうとしていたのか。秀彦は気になって、忖度《そんたく》したが、よくわからなかった。  新幹線は、さすがに速い。在来線だと、上野から小山、宇都宮といえば、かなり時間をくったものだが、すいすいとばす。朝食をぬいていたので、秀彦は颯子をビュッフェに誘った。  颯子は首をふった。ビュッフェにゆかなくても、ここでお弁当でも買いましょうよ、と言った。気どりがない。いや、人前にあまり顔を晒《さら》したくないのかもしれない。秀彦は車内販売の弁当をまつことにした。