付録付きバッグ
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ネ・ネット2015 Spring/Summer Collection (祥伝社ムック)
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ネ・ネット2015 Spring/Summer Collection (祥伝社ムック) 
PINK HOUSE 2015 mini-Boston Shoulder Bag (e-MOOK 宝島社ブランドムック)
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PINK HOUSE 2015 mini-Boston Shoulder Bag (e-MOOK 宝島社ブランドムック) 
X-girl 2015 SPRING SPECIAL BOOK (e-MOOK 宝島社ブランドムック)
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X-girl 2015 SPRING SPECIAL BOOK (e-MOOK 宝島社ブランドムック) 
X-girl Stages 2015 Spring (祥伝社ムック)
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X-girl Stages 2015 Spring (祥伝社ムック) 
くまモン★カレンダーBOOK 2015-16 (祥伝社ムック)
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くまモン★カレンダーBOOK 2015-16 (祥伝社ムック) 
マタニティnina's[ニナーズ] vol.3 フェフェ母子手帳バック付き (祥伝社ムック)
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マタニティnina's[ニナーズ] vol.3 フェフェ母子手帳バック付き (祥伝社ムック) 
null 布製の黒の大きなスポーツバッグは、猪河原公一郎東京連絡事務所の押入れの中に前からあったものだった。以前にも牛尾修二は、そのバッグに札束を入れて、車である場所に運んだことがあった。運んだ場所はある現職の国会議員の自宅だった。運んだ金はそのときは身代金《みのしろきん》ではなくて、闇の政治献金だった。  その金は、猪河原公一郎が自分の会社の事業を通して生み出した裏金《うらがね》だった。それが国会議員の選挙のための裏金に流れていった。バッグはそのときの裏金の運搬用に買い求められたもので、今度が二度目の出番ということになったわけだった。  裏金は裏金として選挙に使われ、それを運ぶために新しく買い求められたバッグは、二度目の務めも身代金といういわくつきの金の運搬に使われる。金にも物にも、何か定められた運命があるのかもしれない——そういった妙な感慨を覚えながら、牛尾修二はトランクルームから黒いバッグを抱え出した。バッグはかなりの重量になっていた。  牛尾修二はそれを右に左に持ち替えながら手にさげて、駐車場の道路を進み、エレベーターに乗った。コートのポケットに押し込んである小型の携帯電話が、重たいバッグをさげて歩くのに邪魔になった。  エレベーターを降りたところは、JR新宿駅の東口の構内ホールだった。夕方のラッシュアワーを迎えて、ホールは人でごった返していた。  牛尾修二は、一億円の入った重たいバッグで、人々を押しのけるようにしながら、コインロッカーのコーナーに行った。  最初に入ったコーナーには、そのバッグが入るだけの、大型のロッカーの空きが見つからなかった。別のコーナーにようやく空いている大型ロッカーを見つけた。牛尾はバッグを半ば立てるようにして、ロッカーの中に押し込んだ。コインを入れ、施錠《せじよう》してから、扉を動かしてロックを確かめ、抜き取ったキーは手の中にしっかりと握りこんで、拳《こぶし》ごとコートのポケットに入れた。  猪河原公一郎の代理として出席することになったパーティの会場は、新宿駅の近くのホテルのバンケットルームとなっていた。歩いても十分たらずの距離だった。  牛尾修二は、駅のホールから階段を上がって、東口に出た。外の歩道も渦《うず》を巻くような人の波で埋まっていた。  赤信号で立ち止まったとき、牛尾修二はふと不安に襲われた。コインロッカーに入れた一億円が、たとえば火災で燃えてしまうとか、何かのまちがいで扉が開いてしまって、誰かが持ち去るのではないか、といった思いが頭をよぎったのだ。  そんなことはまず起りっこない、と考えて彼は不安を追い払った。すると、犯人が身代金をコインロッカーに入れさせたことの謎について、蛭田貫一が言っていたことが、牛尾修二の頭に浮かんできた。  蛭田貫一は、いくつかの仮説を立てて、その謎を解こうとしていたが、結局はこれといった答は見つけ出せずにいるようすだった。私立探偵に解けない謎が、秘書のプロにすぎない自分に解けるはずはないと思って、牛尾修二はそのことについて考えるのは止めてしまった。どんな謎がそこに隠されていようと、猪河原公一郎がとにかくいったんは身代金を犯人の手に渡そうと考えている以上は、犯人が無事に一億円を受け取ることになるのだ。  そう考えてはいたものの、実際に一億円という大金をコインロッカーに入れてしまうと、解くことを放棄していた謎が、ふたたび牛尾修二の前に立ちふさがるようにして現われてくるのだった。  その謎も頭から追い払って、牛尾修二は横断歩道を渡った。少し歩くと、歩道の人の群《むれ》がいくらかまばらになった。牛尾修二はコートのポケットから手を出し、スーツのポケットからたばことライターを取り出した。盛《さか》り場《ば》の雑踏《ざつとう》の中で、深々とたばこの煙を吸って吐き出すと、一瞬、心が軽くなった気がした。重たいバッグの運搬から肉体的に解放されたせいのようにも思えた。そして牛尾修二の気持は、これから出席するパーティのほうへと、たばこの煙のように流れていった。  そのパーティは、県会議員猪河原公一郎の地元の市で発行されているタウン誌と、文芸同人誌の創刊二十周年と十周年を祝うという主旨で開かれるものだった。  タウン誌と文芸同人誌の発行元は、同じ雑誌社だった。その雑誌社の社長で、タウン誌の編集長を兼ねている人物が、タウン誌の創刊より十年遅れて、季刊の文芸同人誌『地平線』を創刊した。親雑誌の社長は、中央の詩壇にも名前を知られている、キャリアの長い詩人でもあった。タウン誌と文芸同人誌『地平線』が、そろって区切りのよい時期を迎えたので、有志の間で祝いの集りを開こうという相談がまとまったのだった。  猪河原公一郎は、県会議員として、また猪河原産業株式会社の社長として、そのタウン誌とは名刺広告などで古くから儀礼的な交際を持っていた。創刊二十周年と十周年を祝う会に猪河原公一郎が呼ばれたのは、そういったことがあったからだった。  牛尾修二のほうも、タウン誌の編集発行人の老詩人と、個人的な交際があった。牛尾修二は、タウン誌よりもむしろ、文芸同人誌『地平線』との縁が深かった。牛尾修二は、一年に一作か二作の小説を書きあげては『地平線』の主宰者である老詩人に読んでもらう、ということをすでに十数年にわたってつづけていた。